2014/11/25
柳下・日歯大准教授が歯科技工士向け講演:「口腔粘膜癌への関心と理解を期待」
がんの話題は、毎日のようにマスコミを賑わしている。国民の関心の高さを物語っているが、一方で、医師・歯科医師以外の医療従事者にもその理解が求められるが、歯科関連専門職はまだまだ十分とはいえない。こうした中で、前号(824号)で報告したように日本口腔顎顔面技工研究会学術大会(11月8日開催)での特別講演として、柳下寿郎・日歯大准教授が、日歯大附属病院でのがん患者の動向・対応、課題と展望など、大会に参加した歯科技工士向けに講演した。
柳下教授は現状認識について「日本は急激な高齢者社会を迎え、現在では男性は2人に1人、女性は3人に1人ががんに罹患すると言われている。一方、現在では、がんは全死亡原因の1/3を占めるようになっている。それに伴い、口腔がんにおいても増加しているといわれているが、全体のがん罹患者数の1~2%に過ぎず稀少症例の1つ。このような背景が患者さんと歯科医師との間にがんに対する意識のギャップの原因があるのかもしれない」とした。医療・健康問題が議論される時には、必ずがんが取り上げられ、国民のがんへの関心は高まる傾向にある。
一方、口腔がんの種類について、「口腔粘膜がん、唾液腺がん、顎骨中心性がんに大別され、さらに口腔粘膜がんは、舌がん、上顎歯肉がん、下顎歯肉がん、頬粘膜がん、口底がん、硬口蓋がんに分類できる。また、口腔粘膜がんの一つある舌がんは、口腔がん全体の5~6割を占めており、臨床的に十分注意すべきがんである」とした。
その原因について「特定された因子はまだ証明されていない。そのような中で、外的因子として、タバコ、アルコール等の化学物質による刺激、鞍状の歯列、う蝕や不良補綴物による機械的刺激が挙げられている。歯科医療に係わる者として放置しておけない外的因子が含まれている」と改めて指摘した。歯科技工士の立場からは、口腔がんの外的原因として不良補綴物と関係が気になるが、「何らかの理由があると考えられていることは事実。この点からも歯科技工士にも問題意識と理解をしてほしい」とした。
こうした背景を踏まえながら、本歯科大学病院のがん患者への対応を説明した。「歯科医師側にとって口腔がんは少ないという意識があるため、がんを心配して来院された患者さんと歯科医師との間で意思の疎通が十分でなかったりしていたことは事実で、実際に当院でも数年前までは、患者さんが口腔がんを心配して来院されたのに、何も検査もせず説明するだけで終わることもあった。現在では、最低でも細胞診検査を行い、顕微鏡レベルで確かめて、患者さんに説明している」と新たな取組を紹介した。
柳下准教授は、“口腔がんを早期に発見し、進行がんを減少させること”に努めており、病院内で、診断・治療システムを構築。そのためにも、歯科医師の口腔粘膜の診る力・診断力向上に努めている結果として、「当院での特徴は、早期がん患者が多く、それらの予後が非常に良いことです。恐らく、都内ではトップクラスにはいるものと自負している」としている。
最後に、「歯科技工士の方々にも関心を持っていただき、患者のために専門職として努めてほしい」と今後に向けて意欲を示していた。